知財戦略を成功に導く!戦略立案のための12のマインドセット

知的財産戦略(知財戦略)の立案は、企業成長の重要な鍵を握っています。

しかし、戦略立案は単なる知識やテクニックだけでは成功しません。

成功の裏には、戦略を効果的に実行するための確固たる「マインドセット」が存在します。

本記事では、知財戦略を含むあらゆる戦略立案において不可欠な14のマインドセットを解説します。

これらのマインドセットを理解し、実践することで、より納得性の高い、実効性のある戦略を構築し、目標達成へと大きく近づくことができるでしょう。

目次

なぜマインドセットが重要なのか?

戦略立案は、羅針盤のない航海に似ています。

目的地(目標)が不明確であれば、どこへ向かっているのか分からず、途中で迷ってしまうでしょう。

また、航海に必要な資源(リソース)や、遭遇するであろう障害(競合)を考慮しなければ、座礁してしまうかもしれません。

マインドセットは、この羅針盤と航海図の役割を果たします。

明確な目的意識、状況を的確に捉える視点、そして変化に柔軟に対応する姿勢など、戦略立案を成功に導くための基盤となる考え方、それがマインドセットなのです。

知財戦略立案のための14のマインドセット

以下に、知財戦略を含むあらゆる戦略立案において重要な12のマインドセットを示します。

1.「目的」(目指す状態)を設定し、関連者に共有する

戦略立案は、目的を達成するための手段です。

何のために戦略を立てるのか、最終的にどのような状態を目指すのかを明確に定義することが、戦略立案の出発点となります。

目的が曖昧なままでは、戦略の方向性も定まらず、関係者の協力も得られません。

目的を明確に設定し、関係者全員に共有することで、目標達成への意識を共有し、一体感を生み出すことができます。

例えば、知財戦略であれば、「競合他社に対する優位性の確立」「新規市場への参入」「自社技術の保護」など、具体的な目的を設定し、経営陣、開発部門、法務部門など、関係者間で共有することが重要です。

2.2者以上の相手を敵として戦わない

企業が保有するリソース(資金、人材、時間など)は有限です。

複数の競合他社と同時に戦うことは、リソースの分散を招き、各戦いにおいて十分な力を発揮できなくなります。

戦略上、戦うべき相手を絞り込み、一点集中でリソースを投入することが重要です。

知財戦略においては、特に重要な特許技術を持つ競合企業に焦点を絞り、集中的な対策を講じることで、効率的に優位性を確立することができます。

3.敵の強いところで戦わない(孫子の兵法)

「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」(孫子・謀攻篇)。

敵の強みと自社の弱みを分析し、敵の得意とする分野で正面から戦うことを避けるべきです。

敵が強固な特許網を構築している分野では、正面突破は困難です。

そのような場合は、敵の弱点を探し、そこを攻める、あるいは敵が未開拓の分野に進出するなど、戦略的な迂回を検討することが賢明です。

4.弱点、または弱者を攻める

敵の弱点や、競合が少ない市場セグメントを狙うことは、少ないリソースで大きな成果を上げるための有効な手段です。

知財戦略においては、競合他社が注目していない技術分野に着目し、特許出願を進めることで、ブルーオーシャン戦略を展開することができます。

5.弱者である場合は、まず一点でNo.1になる(ランチェスター戦略)

中小企業やスタートアップなど、リソースが限られている弱者の立場では、全ての分野で大企業と競合することは困難です。

ランチェスター戦略が示すように、特定のニッチ市場や技術分野に特化し、まずはその分野でNo.1の地位を確立することを目指すべきです。

知財戦略においては、特定の技術分野に特化した特許ポートフォリオを構築することで、その分野における優位性を確立し、大企業との差別化を図ることができます。

6.強者である場合は、数の勝負に持ち込む(ランチェスター戦略)

豊富なリソースを持つ大企業は、ランチェスター戦略における強者の立場を利用し、多角的なアプローチで市場を制圧することができます。

知財戦略においては、広範囲にわたる特許出願を行い、競合他社の参入を阻む、いわゆる「特許網」を構築することが有効です。

7.保有する資源を元に、戦略を決定する(ジェイ・B・バーニー)

戦略は、企業が保有するリソース(物的資源、人的資源、組織能力など)に基づいて決定されるべきです。

自社の強みを最大限に活かし、弱みを補完する戦略を立案することが重要です。

知財戦略においては、自社の技術力、特許担当者の能力、予算などを考慮し、最適な戦略を選択する必要があります。

8.ポジショニングを決め、「攻め」(参入障壁崩し)と「守り」(障壁強化)を意識する

市場における自社のポジショニングを明確にすることで、取るべき戦略が明確になります。

「攻め」の戦略は、新規市場への参入や競合他社の市場シェア奪取を目指すものであり、知財戦略においては、新規技術の特許取得や競合他社の特許に対する異議申し立てなどが該当します。

「守り」の戦略は、自社の市場シェアや技術優位性を維持するためのものであり、知財戦略においては、既存の特許ポートフォリオの強化や、競合他社の特許侵害に対する防御などが該当します。

9.「独占」こそが大きな利益を生む。それから拡大をする。(ZERO to One)

ピーター・ティールの著書「ZERO to One」で示されているように、真のイノベーションは独占を生み出し、大きな利益をもたらします。

知財戦略においては、他社が容易に模倣できない革新的な技術を開発し、特許によって独占することで、市場における圧倒的な優位性を確立し、大きな利益を獲得することができます。

その上で、獲得した利益を元に更なる事業拡大を狙うことが重要です。

10.外部の優れたものを吸収する

自社だけで全てを開発する必要はありません。

外部の優れた技術やアイデアを積極的に取り入れることで、開発期間の短縮やコスト削減につながります。

知財戦略においては、他社の特許ライセンスを取得したり、共同研究開発を行うことで、効率的に技術力を向上させることができます。

11.複数のプランを考える(A plan, B plan, C plan)

状況は常に変化します。

一つのプランに固執するのではなく、複数のプランを用意しておくことで、変化に柔軟に対応することができます。

知財戦略においても、市場の変化や競合他社の動向に応じて、複数のシナリオを想定し、対応策を準備しておくことが重要です。

12.目先に捉われず、少し先を考える

短期的な利益にとらわれず、長期的な視点を持って戦略を立案することが重要です。

知財戦略においては、将来の技術動向や市場の変化を見据え、長期的な視点で特許ポートフォリオを構築していくことが重要です。

まとめ

本記事では、知財戦略を含むあらゆる戦略立案において重要な12のマインドセットについて解説しました。

これらのマインドセットは、戦略を成功に導くための基盤となる考え方です。

これらのマインドセットを理解し、実践することで、より納得性が高く、実効性のある戦略を構築し、目標達成へと大きく近づくことができるでしょう。

知財戦略は、企業経営における重要な要素の一つです。

本記事が、皆様の知財戦略立案の一助となれば幸いです。

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この記事を書いた人

企業の知的財産部門で働く、理系出身の弁理士です。

知財分野に関わり始めた方が、これからさらに成長していくお手伝いができればと思い、このサイトを作りました。

[経歴]
・2007年 関西の大学院を修了
・2007年 食品会社で研究開発を行う
・2013年 食品会社の知的財産部門で働く
・2019年 弁理士試験合格
・2020年 弁理士登録
・2021年 ブログを執筆開始

知的財産の世界を、できる限りわかりやすくお伝えしたいと思っております。
皆さんに少しでも興味を持っていただけると幸いです。

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