特許の出願と権利化の基礎!|これだけは知っておきたい4つのこと

特許を出すように会社で言われたんだけど、基礎的なことがわかってなくて。どうしたらよいものかな。。。

いきなり特許を出願せよと言われても、とまどってしまいますね。
せめて基礎知識だけでも身に付けておくとスムーズに進められるよ。

特許を出願した後、権利化するための基礎も知っておきたいな。

そうだね。
権利化についての基礎的なポイントも知っておくと役に立つよ。

このページでは特許の出願・権利化について、4つのポイントに絞ってお伝えしていきます。

✓ 発明の定義と発明の創り方について

✓ 特許が登録されるための要件について

✓ 特許出願書類の種類について

審査請求、及び拒絶理由通知の対応について

順番に説明していきます。

目次

1. 発明と発明提案について

1-1. 発明とは何か

特許を取るためには、発明をつくり出す必要があります。
それでは、基本的なこととして、発明とは何なのでしょう?

発明とは、

「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち、高度のもの」

と定義されています。

少し、わかりにくい表現ですよね。
詳しく説明すると長くなってしまいますが、

「技術的なアイデア」

という表現が、最も端的でわかりやすいかもしれません。
まずは、自分の思いついたアイデアが、「発明」に該当するかを考えましょう。

この「発明」に該当しないものは、そもそも特許性があるかどうかの審査の対象外となって、門前払いされてしまうのです。

そのため、まず第一の前提として、発明の定義はしっかり押さえておきたいところです。

「発明」の定義について詳しくはこちらに記載していますので、参考にしてみてください。

1-2. 発明の作り方

では、この発明の前提を抑えつつも、どのように発明を考えて作っていくとよいのでしょうか。
自分で発明を提案していく際にも、発明の考え方を知っておくと、数多くの発明を出しやすくなります。

企業の知財部門にいる方であれば、研究者や開発者によい発明を提案してもらえると、仕事もスムーズに進みますよね。

発明は、「課題」「解決方法」とのセットで考えられます。

商品やサービスを作っていく際に、何か、「問題」や「困りごと」が発生することがあると思います。
これを解消しようとする上で、「課題」が設定されます。

そして、その設定された課題に対して、どのような工夫をして解決をしたのか。
その「解決方法」を考えることが、発明を考えることになります。

・どのような課題を設定したのか
・その課題に対して、どのような解決策を導いたのか

この2点に重きをおいて考えられるとよいと思います。

発明を自分で創っていくための考え方について、詳しくはこちらに記載していますので、参考にしてみてください。

1-3. 発明提案書にまとめる

ある程度発明の形が頭の中で創られてきたら、そのアイデアを一枚の書面にまとめてみると良いでしょう。

発明の概要をまとめた書類を、

「発明提案書」

と呼ぶことがあります。

この「発明提案書」を作ることで、自分の頭の中を整理しつつも、説明する相手に対しても理解してもらいやすくなります。

そして、知財部門や弁理士事務所に特許出願を依頼をする際にも、スムーズに進めることができるようになります。

発明提案書の作り方について、詳しくはこちらに記載していますので、参考にしてみてください。

2. 特許要件について

2-1. 特許要件とは

発明を思いついたら、これを特許出願して、特許にしたいところです。

では、どうしたら特許になるのか?
それには、特許として認められるための条件、つまり

「特許要件」

を知っておく必要があります。

特許として認められるか否かは、特許庁の審査官が判断します。
特許庁の審査官は、提出された発明が、この「特許要件」を満たしているかどうかで、特許にするか否かを判断します。

特許要件は、複数あります。
ただ、絶対に知っておいていただきたい基礎的かつ、重要なことは、次の2つです。

それは、

・新規性があること
・進歩性があること

この2つの要件について、少しご説明します。

2-2. 新規性とは

「新規性がある」とは、世の中でまだ公に知られていないこと、つまり「公知でないこと」です。

既に公になっていることが特許になるのであれば、誰でも特許を取ることができるようになってしまいます。

特許制度がある理由は、他人にマネをされることを防ぐことが1つの理由です。
それなのに、マネをすることで特許が取れるのであれば、本末転倒ですよね。

だから、特許要件に新規性が有ることが決められているのです。

2-3. 進歩性とは

次に、「進歩性がある」とは、既に公知な情報から、「容易には思いつかないこと」です。

仮に新規性があるアイデアだとしても、公知の情報をちょっと変えただけの場合、誰でも思いついてしまいます。
そのようなアイデアに対しても特許を与えてしまうと、それも特許が乱立してしまう環境を作ってしまいます。

特許が乱立してしまうと、多くの人が事業をしにくくなり、産業が発展していかなくなってしまいます。

特許制度の根本的な目的は、「産業の発達」です。

進歩性がないものにまで特許を与えると、本来の特許制度の目的を達成できなくなってしまいます。
だから、特許要件に進歩性が有ることが決められているのです。

2-4. その他の特許要件

特許化するための要件として、上の2つは、必ず押さえておいてください。

特許要件は、上記2つ以外にも、以下のようなものがあります。

・産業上の利用可能性
・実施可能要件
・明確性要件
・サポート要件

これらの特許要件についてのより詳しく話は、こちらに記載しています。
よければ参考にしてみてください。

3. 特許出願書類の作成について


さて、特許要件を満たせそうな発明を思いつき、特許を取ろうと思い立ったら、

特許出願の手続き

が必要です。

特許出願の手続きは、書類を提出することで行います。

思いついた発明を、商品等の形ある「物」で作ったとしても、その物自体をもっていって審査をしてもらうことはできません。
そのため、一定の書式で書類を作成し、提出する必要があるのです。

書類の種類は、主に以下の5つになります。
・願書
・特許請求の範囲
・明細書
・図面
・要約書

「願書」は、特許出願の意志があることを示す資料です。
誰が発明者で、誰が特許出願を行うのか、費用はいくらなのか、等を記載するものになります。

「特許請求の範囲」は、いわゆる「発明そのもの」です。
「請求項」と呼ばれることもあります。
ここに記載した文章の範囲で「特許権」が欲しいことを主張するものです。
文章で記載することとなっていますので、言葉一つで大きく意味が変わる場合もあります。
そのため、最も注意して記載する部分と言えるでしょう。
何度も何度も推敲して、練り直すことも少なくありません。

「明細書」は、発明を詳しく説明する部分です。
基本的に「請求項」は、簡潔に書くように定められています。
そのため、請求項に記載されている言葉の意味や、それが特許性のある発明であることを裏付けるデータ等を記載します。
いわゆる、発明の解説書とでも思っていただけるとよいかと思います。

「図面」は、その名のとおり、図を掲載するものです。
図面は必須の書類ではありません。
説明をわかりやすくしたい場合等に、必要に応じて、掲載するものになります。

「要約書」とは、発明を要約したものを記載する書類です。
これは、特許庁の審査官や、その公報を見た第三者が、発明の概要を理解しやすいように準備する書類です。
この要約書は便宜上設定されているものですので、要約書の内容は審査に影響を及ぼしません。

提出書類の概要をざっとお伝えしました。
願書や要約書は、形式的な部分が多いため、それ程悩むことはないかもしれません。
一方、「特許請求の範囲」と「明細書」の書き方については、奥が深いです。

それぞれの書類の作成方法については、こちらに詳しく記載していますので、よければ参考にしてみてください。

4. 審査請求、及び拒絶理由通知の対応について

4-1. 審査請求について

特許出願を行ったら、審査官に審査をしてもらうことで、特許化を行うことができます。
しかし、特許出願を行っただけでは、審査を行ってくれません。
審査官に審査を行ってもらうには、

「審査請求」

を行う必要があります。

この「審査請求」は、出願から3年以内に行う必要があります。
出願から3年以内にこれが行われないと、「みなし取下げ」といって、出願したものを取り下げたとみなされてしまい、特許化することができなくなります。

そのため、出願から3年の間で、本当に特許化したいものなのかを判断し、特許化する意思があるのであれば、「審査請求」を行うことが必要です。

4-2. 拒絶理由通知について

特許出願と審査請求を行うことで、審査官が審査を行うことになりますが、審査官が1回確認しただけで、すぐ特許になることはほとんどありません。

大抵は、

「拒絶理由通知書」

といって、特許にできない理由が示された書類が届きます。

拒絶理由通知書に主に記載されている内容は、次の2つです。
 ・前述した特許要件の内、どの要件を満たしていないか
・その特許要件を満たしていない理由

後述しますが、これらを解消することができれば、特許化することができます。

また、拒絶理由通知には、種類が2つあります。
一つは、「(1回目の)拒絶理由通知」、もう一つは、「最後の拒絶理由通知」です。

「最後の拒絶理由通知」というのは、「1回目の拒絶理由通知」を解消した後、それによって新たにまた拒絶理由が発生した場合に、その拒絶理由通知のみを知らせるものです。

「最後の拒絶理由通知」に対する対応方法は、1回目のときよりも限定されてしまうので、対応には注意が必要です。

4-3. 意見書、及び手続補正書について

これらの拒絶理由を通知されたからといって、特許化を諦める必要はありません。
審査官の示された拒絶理由をよく理解して、その理由を解消することができれば、特許にすることができます。

場合によっては、審査官の方から、拒絶理由を解消する方向性を示唆してくれる場合もあります。

拒絶理由を解消する考え方は、以下の2つの状況によって異なります。

・拒絶理由で示された内容は、妥当である。
・拒絶理由は示された内容は、審査官の認識間違い等があり、妥当ではない。

拒絶理由で指摘された内容が、妥当な場合の対応はの一つは、「手続補正書」にて補正を行うことです。
請求項や明細書の内容を「補正」することで、拒絶理由を解消することを図ります。

拒絶理由で示された内容が、妥当ではない場合の対応は、「意見書」で意見を述べることです。
審査官の指摘が妥当ではない理由、出願した発明が特許化されるに値するものである理由を記載して、主張することができます。

「手続補正書」と「意見書」は、共に提出することもできます。

この、「手続補正書」と「意見書」を提出することが、拒絶理由の対応の基本的な方法です。

「手続補正書」と「意見書」の内容を再度審査官は確認し、拒絶理由が存在しない、又は解消したと判断されれば、特許化されます。
逆に、拒絶理由が依然として存在する、或いは、解消していないと判断されれば、特許化することはできません。

いずれにせよ、基本的にはこの2つの書類を提出することを念頭に置いておいてください。

5. まとめ

今回は、特許の出願から権利化までの概要をお伝えしてきました。

・発明とは、技術的なアイデアであり、課題に対する解決方法を示したものでした。
・特許要件として、「新規性」と「進歩性」が重要な要件として挙げられました。
・あわせて、出願書類には5つの種類のものがあり、「特許請求の範囲」と「明細書」が最も苦労する書類であることをお伝えしました。
・そして、出願後の拒絶理由通知への対応方法として、「手続補正書」と「意見書」があることをお伝えしてきました。

今回の話は、概要の説明に留まりましたが、これを基に、出願・権利化の手続きの知識を深めていってもらえると幸いです。

今回の話が、少しでもあなたのお役に立てるようであれば幸いです。
今日という日が、あなたにとって良い日でありますように。

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この記事を書いた人

企業の知的財産部門で働く、理系出身の弁理士です。

知財分野に関わり始めた方が、これからさらに成長していくお手伝いができればと思い、このサイトを作りました。

[経歴]
・2007年 関西の大学院を修了
・2007年 食品会社で研究開発を行う
・2013年 食品会社の知的財産部門で働く
・2019年 弁理士試験合格
・2020年 弁理士登録
・2021年 ブログを執筆開始

知的財産の世界を、できる限りわかりやすくお伝えしたいと思っております。
皆さんに少しでも興味を持っていただけると幸いです。

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