
「ありたい姿」を思い描くように言われたんだけど、
どう考えればいいか、さっぱりわからなくて。。。



確かに、まっさらな所から描くのは難しいよね。
でも、そのためのいい方法があるんだ。



えっ!それは何なの?
教えて!!



それは、「SWOT」分析と「クロスSWOT」分析を行うことだよ。
今回は、これについて詳しく解説していくよ。
「我が社の技術力は高いはずだが、どうも事業に活かしきれていない…」
「競合他社が次々と新しい特許を出しているが、うちはどう対応すべきか?」
「そもそも、自社の知財がどれだけの価値を持っているのか把握できていない…」
企業の経営層や知財担当者の皆様、このような課題やお悩みをお持ちではありませんか?
技術革新が加速し、グローバル競争が激化する現代において、特許やブランド、ノウハウといった知的財産(知財)は、単なる「権利」ではなく、企業の将来を左右する重要な経営資源です。
しかし、その価値を最大限に引き出し、競争優位性を確立するためには、場当たり的な対応ではなく、明確な「知財戦略」が不可欠です。
知財戦略なき経営は、荒波に羅針盤なく船を出すようなもの。自社の進むべき方向を見失い、思わぬリスクに晒される可能性すらあります。
本記事では、事業の現状を客観的に把握し、未来の方向性を描き出すための強力なツール「SWOT分析」と「クロスSWOT分析」を用いて、実践的な知財戦略を立案する方法を解説します。
経営と知財を結びつけ、貴社の持続的な成長を実現するための一助となれば幸いです。
✓ なぜ今、経営にSWOT分析を活かした知財戦略が必要なのか
✓ SWOT分析で自社の「事業」と「知財」の強み・弱み・機会・脅威を洗い出す方法
✓ クロスSWOT分析で具体的な知財戦略オプションを導き出す手順
✓ 分析結果を経営判断に活かし、実行計画に落とし込むポイント
なぜ今、知財戦略にSWOT分析が必要なのか?
目まぐるしく変化する経営環境において、知財の重要性はますます高まっています。
単に良い製品・サービスを提供するだけでは、すぐに模倣されたり、より優れた技術に取って代わられたりするリスクがあります。
ここで重要になるのが、事業戦略と知財戦略の連携です。
事業目標の達成に向けて、知財をどのように取得・保護・活用していくのか。
この問いに答えるためには、まず自社の置かれた状況を正確に把握する必要があります。
SWOT分析は、自社の内部環境(Strengths: 強み、Weaknesses: 弱み)と外部環境(Opportunities: 機会、Threats: 脅威)を整理・分析することで、現状を客観的に見つめ、将来の事業展開とそれに伴う知財戦略の方向性を定めるための羅針盤となるのです。
SWOT分析:事業と知財の現状を徹底解剖
SWOT分析は、以下のステップで進めます。
1.分析対象の明確化: 全社レベルか、特定の事業部か、あるいは特定の製品・技術か、分析のスコープを定めます。
2.情報収集: 内部(財務状況、技術ポートフォリオ、特許・商標リスト、ブランド評価、従業員スキル、顧客の声など)と外部(市場動向、競合の知財戦略・出願状況、技術トレンド、法規制、経済情勢など)から、客観的な情報を幅広く集めます。
3.SWOTマトリックスの作成: 収集した情報を、以下の4つのカテゴリーに分類し、書き出します。この際、知財の視点を強く意識することが重要です。
・強み (Strengths): 競争優位性の源泉となる内部要因
・例: 競合が模倣困難なコア技術に関する特許群、高い市場認知度を持つブランド、秘匿化された独自の製造ノウハウ、有利なライセンス契約、経験豊富な知財専門人材 など
・弱み (Weaknesses): 競争上の不利となる内部要因
・例: 重要な技術が未権利化、知財管理体制の不備・属人化、他社特許権による事業上の制約、ブランドイメージの低下、知財紛争への対応力不足 など
・機会 (Opportunities): 事業成長につながる可能性のある外部要因
・例: 新技術トレンド(関連分野の特許出願増加など)、未開拓市場でのブランド構築チャンス、競合他社の知財戦略上の弱点、オープンイノベーションによる技術導入機会、知財関連の法改正(自社に有利なもの)など
・脅威 (Threats): 事業継続の障害となりうる外部要因
・例: 競合他社による強力な特許網の構築、技術模倣や情報漏洩のリスク、新規参入者の知財攻勢、パテントトロールからの訴訟リスク、不利な法改正、国際的な知財紛争の増加 など
分析のポイント
✓ 客観性: 希望的観測や思い込みを排除し、事実に基づいて評価します。
✓ 多角的な視点: 経営層、知財担当、研究開発、営業など、様々な部門からの意見を取り入れます。
✓ 具体性: 抽象的な表現ではなく、具体的な事実やデータを記述します。
ここで、ある架空の「中堅メーカーA社」のSWOT分析を行ってみるとします。
そうすると例えば、以下の表に記載のような事例が出てくるかもしれません。
精密加工技術 | 強み:EV市場の拡大 | 機会:
海外でのブランド認知度 | 弱み:競合の関連特許出願増加 | 脅威:
クロスSWOT分析:知財戦略の選択肢を導き出す
SWOT分析で現状を把握したら、次はその結果を組み合わせて具体的な戦略オプションを創り出す「クロスSWOT分析」に進みます。
これは、洗い出した各要素を掛け合わせることで、より実践的な打ち手を検討する手法です。
以下の4つの組み合わせから、自社が取るべき戦略の方向性を考えます。
ここでも、具体的な知財アクションを意識することが重要です。
- 「強み」×「機会」(SO戦略:積極攻勢): 自社の強みを活かして機会を最大限に捉える戦略。
- 知財アクション例: コア技術特許を活かした新市場向け製品開発と国際特許出願、ブランド力を活用したライセンス事業展開と関連商標の保護強化、技術的優位性を背景とした標準化活動への参画。
- 「弱み」×「機会」(WO戦略:弱点克服・機会活用): 弱みを克服・補強し、機会を活かす戦略。
- 知財アクション例: 不足技術のライセンス導入やM&Aによる獲得と権利保護、共同研究開発契約による外部知見の活用と成果の権利化、知財管理体制の強化(専門部署設置、システム導入、人材育成)。
- 「強み」×「脅威」(ST戦略:差別化・防御): 強みを活かして脅威の影響を回避・軽減する戦略。
- 知財アクション例: 競合の特許網を回避する代替技術開発と特許化(パテントフェンス)、パテントクリアランス調査の徹底、ブランド模倣品対策(監視、警告、法的措置)、営業秘密としてのノウハウ管理強化。
- 「弱み」×「脅威」(WT戦略:防衛・撤退/転換): 最悪の事態を避けるための防衛的な戦略、あるいは事業の縮小・転換。
- 知財アクション例: 知財訴訟リスクの高い事業からの撤退判断と関連知財権の整理(売却、放棄)、技術流出リスクの低減策(情報管理規定、秘密保持契約)、ノンコア技術に関する知財の選択と集中。
分析のポイント
✓ 具体性: 各戦略オプションを、具体的なアクションプランに落とし込みます。
✓ 優先順位付け: すべてを実行するのは困難です。経営目標との整合性、実現可能性、リスク、期待される効果などを考慮し、優先順位をつけます。
機会:EV市場拡大 | 脅威:競合の特許増加 | |
精密加工技術 | 強み:EV向け部品に関する特許網構築 | |
海外ブランド認知度 | 弱み:海外市場での事業縮小 or 提携戦略 |
戦略の選択と実行:未来への羅針盤を定める
クロスSWOT分析によって、複数の戦略オプションが導き出されました。
最終的には、これらの選択肢の中から、自社の経営目標やビジョンに最も合致し、実現可能性の高い戦略を選択し、具体的な実行計画に落とし込む必要があります。
この段階では、経営層や事業部門、知財担当者の緊密な連携が不可欠です。
経営層は、知財をコストではなく投資と捉え、戦略的な意思決定を行う必要があります。
一方、知財担当者は、経営視点、事業視点を持ち、分析結果や知財戦略の意義・リスクを分かりやすく説明し、具体的なアクションを推進する役割が求められます。
選択された戦略は、具体的な目標、担当者、期限、予算などを明確にした実行計画へと落とし込みます。
まとめ
SWOT分析とクロスSWOT分析は、自社の事業と知財の現状を客観的に評価し、未来に向けた効果的な知財戦略を立案するための非常に強力なツールです。
これらの分析を通じて、
- 自社の**真の強み(知財含む)**を再認識し、
- 克服すべき弱点を明確にし、
- 市場に潜む成長機会を発見し、
- 回避すべき脅威に備えることができます。
経営層の皆様へ: 知財は、もはや専門部署だけの問題ではありません。
経営資源としての知財の価値を認識し、事業戦略と一体となった知財戦略の策定・実行に、リーダーシップを発揮してください。SWOT分析はそのための共通言語となり得ます。
知財担当者の皆様へ: 分析スキルを高め、経営視点を持って知財戦略を立案・提案することが、貴方の価値を高めます。
経営層や関連部署を巻き込み、分析から実行までをリードする役割を期待されています。
最後に、市場環境や自社の状況は常に変化します。SWOT分析や知財戦略は、一度作って終わりではありません。
定期的に見直し、アップデートしていくことが、持続的な競争優位性を築く鍵となります。
次のステップでは、これまで集めてきた情報を元に、「5Force分析」を行います。
これにより、ありたい姿と、それに向けた課題が見えてきます。
次回【Step3-3 ありたい姿の特定】では、この「5Force分析」と、さらに戦略を具体化する「ありたい姿」「事業課題」「知財課題」について詳しく解説します。
ぜひ、今回の分析結果を手に、次のステップへ進んでみてください!


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