特許戦略で勝つ!:PEST分析で外部環境を徹底解剖し、知財を最大化する

自社の状況を理解したら、
次は外部の状況を理解する必要がありそうだね。

そうなんだ。
外部の状況も色々な視点があるけど、
まずは世の中全体の流れを知ることが必要かな。

世の中全体か~。
広すぎて、どうやって見て行ったらいいかわかんないよ。

世の中全体の流れを知るためのフレームワークがあるんだ。
この使い方を学んで、知財戦略に活かそう。

知的財産戦略を立案する上で、自社の内情を深く理解することは不可欠です。

しかし、それだけでは不十分です。

自社を取り巻く外部環境の変化を的確に捉え、その変化が自社の事業に与える影響を予測し、それに対応した戦略を立てることが、成功への鍵となります。

本記事では、特許戦略や知的財産戦略を立案する上で、特に重要となる「外部環境調査」について、PEST分析を中心に解説します。

この記事でわかること

✓ PEST分析等の手段により、外部環境の情報を整理し、理解する方法

目次

PEST分析とは

PEST分析とは、政治(Politics)、経済(Economy)、社会(Society)、技術(Technology)の4つの視点から、外部環境を分析するフレームワークです。

PEST分析は、企業を取り巻くマクロ環境を分析するための一般的な手法です。

それぞれの要素について、以下のように具体的に見ていきましょう。

  • Politics(政治):政府の政策、規制、法制度、政治的な安定性など、政治的な要因がビジネスに与える影響を分析します。
  • Economy(経済):経済成長率、インフレ率、金利、為替レート、消費者の購買力など、経済状況がビジネスに与える影響を分析します。
  • Society(社会):人口動態、文化、ライフスタイル、価値観、社会問題など、社会的な要因がビジネスに与える影響を分析します。
  • Technology(技術):技術革新、新技術の導入、IT化、デジタル化など、技術的な要因がビジネスに与える影響を分析します。

PEST分析の具体的な方法

Politics(政治)

PEST分析におけるPolitics(政治)の項目では、事業活動に直接的または間接的に影響を与える、政治的な要素を幅広く調査します。

Politics(政治)の調査は、企業の事業活動に大きな影響を与える可能性があります。

例えば、新しい法規制が導入されれば、事業モデルを変更したり、新たな投資が必要になったりすることがあります。

また、政府の政策によって、業界全体の競争環境が大きく変化することも考えられます。

Politics(政治)の調査は、具体的には、以下の調査観点、及び調査方法で調べると良いでしょう。

調査観点

  • 関連する法規制の変更
  • 税制改革
  • 政府の補助金・助成金制度
  • 貿易政策

調査方法

  • 政府機関のウェブサイト: 各国の政府機関のウェブサイトには、法規制や政策に関する情報が詳細に掲載されています。
  • 法律データベース: 専門的な法律データベースを利用することで、最新の法規制情報を効率的に収集できます。
  • 業界団体: 業界団体は、業界特有の法規制や政策に関する情報を提供していることがあります。
  • 新聞・雑誌・ニュース: 時事的な政治ニュースや政策変更の情報は、新聞や雑誌、ニュースサイトで入手できます。
  • 専門家への相談: 弁護士、会計士、コンサルタントなどの専門家への相談も有効です。

Politics(政治)の調査を通じて、以下のようなことを把握することができるでしょう。

  • 事業リスクの特定: 法規制の変更や政治的な不安定性など、事業リスクを事前に特定することができます。
  • 事業機会の発見: 政府の補助金制度や規制緩和によって、新たな事業機会が生まれる可能性があります。
  • 戦略策定の支援: 政治的な環境を考慮した上で、より効果的な事業戦略を策定することができます。

Economy(経済)

Economy(経済)の項目では、企業の収益や成長に直接的な影響を与える経済状況を多角的に分析します。

Economy(経済)の調査は、企業の事業計画や投資計画を策定する上で非常に重要です。

経済状況の変化は、企業の売上や利益に直接的な影響を与えるだけでなく、競争環境の変化や新たなビジネスチャンスの創出にもつながります。

Economy(経済)の調査は、具体的には、以下の調査観点、及び調査方法で調べると良いでしょう。

調査観点

  • GDP成長率
  • インフレ率
  • 金利
  • 為替レート
  • 消費者の購買力
  • 原材料価格
  • 業界の成長率  等

調査方法

  • 経済指標データベース: 各国の政府機関や国際機関が提供する経済指標データベースを利用することで、最新の経済情報を収集できます。
  • 経済予測レポート: 経済研究所やシンクタンクが発表する経済予測レポートは、将来の経済動向を予測する上で参考になります。
  • 業界団体: 業界団体は、業界全体の経済状況に関する情報を提供していることがあります。
  • 金融機関のレポート: 銀行や証券会社のレポートは、特定の業界や企業の経済状況に関する分析を提供しています。
  • 新聞・雑誌・ニュース: 時事的な経済ニュースや政策変更の情報は、新聞や雑誌、ニュースサイトで入手できます。

Economy(経済)の調査を通じて、企業は以下のようなことを把握することができます。

  • 事業リスクの特定: 景気後退やインフレなど、事業リスクを事前に特定することができます。
  • 事業機会の発見: 新興市場の成長や新たな技術の普及など、事業機会を探索することができます。
  • 投資計画の策定: 経済状況を考慮した上で、最適な投資計画を策定することができます。

Society(社会)

Society(社会)の項目では、企業の事業活動に影響を与える社会的な要因を幅広く調査します。

Society(社会)の調査は、企業がターゲットとする顧客のニーズを正確に把握し、製品やサービスを開発する上で非常に重要です。

社会的な変化は、消費者の行動や嗜好に大きな影響を与え、企業の事業戦略を大きく変える可能性があります。

Society(社会)の調査は、具体的には、以下の調査観点、及び調査方法で調べると良いでしょう。

調査観点

  • 人口動態
  • 文化的背景
  • ライフスタイルの変化
  • 環境意識の高まり
  • 社会問題   等

調査方法

  • 政府統計: 国勢調査データ、社会調査データなど、政府機関が公開している統計データを利用します。
  • 市場調査レポート: マーケティングリサーチ会社が実施した市場調査レポートは、消費者の行動や嗜好に関する詳細な情報が得られます。
  • ソーシャルメディア分析: Twitter、Facebookなどのソーシャルメディア上の発言を分析することで、世の中のトレンドや消費者の声を把握できます。
  • メディア報道: 新聞、雑誌、テレビなどのメディアで報じられる社会問題やトレンドを収集します。
  • 学術論文: 社会学や心理学などの学術論文は、社会現象に関する深い洞察を得るのに役立ちます。

Society(社会)の調査を通じて、企業は以下のようなことを把握することができます。

  • 顧客ニーズの把握: 消費者の価値観やライフスタイルの変化を捉え、顧客のニーズに合った製品やサービスを開発することができます。
  • 新規事業の創出: 社会的な問題の解決や新たなトレンドに対応した、新規事業のアイデアを生み出すことができます。
  • マーケティング戦略の策定: 消費者の行動パターンを分析し、効果的なマーケティング戦略を策定することができます。

Technology(技術)

Technology(技術)の項目では、企業の事業活動に直接的に影響を与える技術的な要因を幅広く調査します。

Technology(技術)の調査は、企業の競争力強化に不可欠です。

新たな技術の導入は、製品やサービスの革新、生産性の向上、コスト削減につながる可能性があります。

また、技術の進化は、ビジネスモデルの変革を促すこともあります。

調査観点

  • 新技術の開発動向
  • 技術の普及速度
  • IT化の進展
  • デジタル化  等

調査方法

  • 学術論文: 学術データベースや論文検索エンジンを利用して、最新の技術に関する論文を収集します。
  • 特許情報: 特許データベースを利用して、競合他社の特許情報を分析し、技術のトレンドを把握します。
  • 業界レポート: 業界団体やコンサルティング会社が発行するレポートは、業界全体の技術動向に関する情報が得られます。
  • 技術展示会: 技術展示会に参加することで、最新の技術動向を直接把握できます。
  • ニュース記事: 技術に関するニュース記事を収集し、技術の普及状況や社会への影響を把握します。

Technology(技術)の調査を通じて、企業は以下のようなことを把握することができます。

  • 新規事業の創出: 新技術を活用した新たなビジネスモデルを創出することができます。
  • 競争優位の確立: 新技術をいち早く導入することで、競合他社との差別化を図ることができます。
  • リスクの管理: 新技術の普及に伴うリスクを事前に把握し、対策を講じることができます。

国の動向調査(科学研究費他)

政府による研究開発投資は、新たな技術や市場を生み出す上で重要な役割を果たします。

科学研究費の配分状況や研究テーマの動向を調査することで、将来の技術トレンドや市場の変化を予測することができます。

科学研究費が、どのような事業、課題に使われているかは、「科学研究費助成事業データベース」から検索して知ることができます。

KAKEN — 研究課題をさがす (nii.ac.jp)https://kaken.nii.ac.jp/ja/

対象事業の市場における知的財産上のステージ

自社の事業が属する市場における知的財産上のステージを把握することも重要です。

競合他社の特許出願状況や技術開発動向を分析し、対象となる事業が、導入期、発展期、成熟期、衰退期、のいずれの事業ライフサイクルにあるのかを把握し、それに対応した知財戦略を立案しましょう。

PEST分析の一例

それでは、具体的にイメージを持っていただくために、例を挙げてPEST分析を行ってみましょう。

テーマとしては、「プラントベースドフード、代替肉」としました。

PEST分析は、最終的に票に整理をするとよいでしょう。

今回は、プラス要因、及びマイナス要因の区分も作り、整理して表を作ってみました。

結果は、以下のとおりです。

カテゴリプラス要因(機会)マイナス要因(脅威)
政治
(Political)
健康志向への政策による需要増加
環境問題への取り組みによる普及促進
食肉産業への影響を考慮した規制
代替肉の表示に関する規制強化
経済
(Economic)
消費者の健康志向の高まりによる需要増加
食肉価格の高騰による価格競争力向上
代替肉の価格競争の激化
景気後退による消費者の購買意欲低下
社会
(Social)
健康志向と倫理観の高まりによる関心増加
若年層を中心とした食文化の変化による受け入れ
ヴィーガン・ベジタリアンの増加による市場拡大
既存の食文化との摩擦
情報発信による風評被害
技術
(Technological)
製造技術の進化による高品質・多様化
バイオテクノロジーの活用による食肉への近似
食品ロスの削減技術による環境負荷低減
流通・販売の効率化による販売促進
技術革新のスピードへの対応
製造コストの削減の限界

少しはPEST分析のイメージがわきましたでしょうか。

まとめ

外部環境調査は、知的財産戦略を立案する上で非常に重要なプロセスです。

PEST分析を活用することで、自社の事業に影響を与える可能性のある様々な要因を網羅的に把握することができます。

外部環境調査を行う上でのポイントは、以下のことです。

  • 定期的に実施する
  • 多様な情報源から情報収集する
  • 複数の視点から分析する
  • 自社の事業との関連性を意識する

本記事で紹介した内容を参考に、自社の事業に合った外部環境調査を実施し、より効果的な知的財産戦略の立案の参考になれば幸いです。

外部環境としてPEST分析を行ったら、次は、「業界動向」を知るとよいでしょう。

業界動向を知ることで、対象となる事業が直接的に影響を受ける内容を知ることができます。

業界動向把握については、こちらの記事を参考にしてみてください。

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この記事を書いた人

企業の知的財産部門で働く、理系出身の弁理士です。

知財分野に関わり始めた方が、これからさらに成長していくお手伝いができればと思い、このサイトを作りました。

[経歴]
・2007年 関西の大学院を修了
・2007年 食品会社で研究開発を行う
・2013年 食品会社の知的財産部門で働く
・2019年 弁理士試験合格
・2020年 弁理士登録
・2021年 ブログを執筆開始

知的財産の世界を、できる限りわかりやすくお伝えしたいと思っております。
皆さんに少しでも興味を持っていただけると幸いです。

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