自社を強くする!知財戦略の始め方:自社の知財を徹底的に理解する

自社事業の状況を理解したところで、
知財戦略立案を進める上で、次に行うことは何かな?

自社事業の理解の次は、
「自社の知的財産の状況」を理解することだね。

自社の知的財産の状況の理解か。
具体的には、どのようなことを行っていけばいいの?

そうだね、今回は、自社の知的財産状況を理解するための
具体的な方法を解説していくよ。

企業の知財担当者、経営者の皆様、こんにちは。

前回の【Step1-1】では、自社の「事業の現状と目論見」を把握しましたね。

これで、あなたの会社の羅針盤となる方向性が見えてきました。素晴らしい第一歩です!

さて、次はその事業を支え、未来を切り拓くための「武器」=知的財産に目を向けましょう。

あなたの会社には、どんな武器が眠っているでしょうか?

それは磨かれていますか?

あるいは、手入れが必要な状態かもしれません。

今回は、【Step1:内部情報を知る】の第2弾として、自社の知的財産ポートフォリオを「棚卸し」し、その現状を正確に把握する方法について解説します。

なぜこれが重要か?

それは、埋もれた「宝」(価値ある知財)を発見したり、見過ごしていた「リスク」(知財上の問題)を早期に発見したりするためです。

そして何より、効果的な知財戦略を立てるための、揺るぎない土台となるからです。

さあ、あなたの会社の「武器庫」の扉を開け、宝探しの旅に出発しましょう!

✓ なぜ自社の知財状況を把握することが重要なのか?

保有する知財を「棚卸し」するための具体的な方法

知財の「価値」を見極めるための評価の視点 見過ごせない「知財リスク」を洗い出すポイント

目次

ステップ①:自社の「知財リスト」を作成する ~どんな武器を持っているか?~

まずは、あなたの会社が現在保有している知的財産を全てリストアップし、全体像を把握しましょう。

これが「棚卸し」の第一歩です。

主な知的財産の種類には、以下のようなものがありますね。

  • 特許権・実用新案権 技術的な発明や考案を守る権利。
  • 意匠権 製品のデザインを守る権利。
  • 商標権 ブランド名やロゴを守る権利。
  • 著作権 ソフトウェアやコンテンツなどを守る権利。
  • 営業秘密(ノウハウ) 公開していない価値ある情報。

これらの権利について、「どんな種類があるか」「何件くらいあるか」を把握します。

実践!情報の集め方と整理術

どうやって情報を集めるか? いくつか方法があります。

  • 社内の知財管理システムや台帳を確認する。
  • 特許庁のデータベース(J-PlatPatなど)で自社名検索する。
  • 知財担当部署や法務部に問い合わせる。
  • 顧問弁理士や弁護士に確認する。

集めた情報は、ただリストにするだけでは不十分です。戦略的に活用できる形に整理しましょう。

  • 権利の種類別に分類する。
  • 関連する事業や製品別に分類する。
  • 技術分野別に分類する。
  • 権利の状況(出願中、登録、維持、放棄、満了など)で分類する。
  • 取得日や権利満了日を明記する。
  • 可能であれば、社内での重要度(高・中・低など)も付与してみましょう。

まずは、この「知財リスト」を作成し、自社の武器庫の全体像を把握することがスタートです。

ステップ②:知財の「価値」を見極める ~切れ味は? 弱点は?~

リストができたら、次は個々の知的財産の「価値」を見極めるステップです。

単なる数合わせで終わらせてはいけません。あなたの会社の「武器」の切れ味を評価しましょう。

知財の評価軸

どんな視点で評価すれば良いでしょうか? 例えば、以下のような軸があります。

  • 事業への貢献度: その知財は、特定の事業の売上や利益にどれだけ貢献していますか?
  • 競合に対する優位性: 競合他社と比較して、その知財はどれだけ強力ですか? 簡単に回避されたりしませんか?
  • 権利の有効性・強さ: 権利範囲は適切ですか? 無効になるような弱点はありませんか?
  • 活用状況: その知財は実際に活用されていますか? それとも「塩漬け」になっていませんか?
  • 将来性: 今後も価値を持ち続ける知財ですか? 陳腐化するリスクはありませんか?

これらの視点から、自社の知財を評価していきます。

強みの発見:エース級の武器は?

分析を通じて、自社の事業を支える「エース級」の知財が見えてくるはずです。例えば、

  • 競合が追随できない基本特許
  • 市場で絶大な信頼を得ているブランド(商標)
  • 効率的な生産を支える重要なノウハウ(営業秘密)

これらの強みを認識し、**「どの事業の競争優位性の源泉となっているのか?」**を明確にしましょう。これらは、今後の戦略でさらに磨き上げるべき「宝」です。

弱みの認識:手入れが必要な武器は?

一方で、**改善が必要な「弱み」**も見えてくるでしょう。例えば、

  • 競合に比べて手薄な技術分野の特許
  • 権利範囲が狭く、回避されやすい特許
  • もうすぐ権利期間が切れてしまう重要な権利。
  • 活用されず、維持費だけがかかっている「塩漬け」知財

これらの弱みを直視し、対策を考えることが、戦略の精度を高めます。

ステップ③:「知財リスク」を洗い出す ~見過ごせない問題点~

強みと弱みを把握したら、次は潜在的な「問題点」=知財リスクを洗い出します。

見過ごすと、将来大きなダメージになりかねません。

主な知財リスクの例

  • 権利範囲の問題: 権利範囲が狭すぎて、競合の模倣を防ぎきれない。
  • 権利の数・質の問題: 特定分野の権利が少ない。無効理由を抱えた質の低い権利が多い。
  • 権利の活用不足: 価値ある知財が使われず眠っている(機会損失、維持コスト増)。
  • 権利の消滅リスク: 重要な権利の期限切れが近い。更新手続き漏れのリスク。
  • 契約上の問題: ライセンス契約などで不利な条件を結んでしまっている。権利帰属が曖昧。
  • 侵害リスク: 自社の製品・サービスが他社の権利を侵害している可能性。
  • 情報管理の問題: 重要なノウハウが営業秘密として適切に管理されていない。情報漏洩リスク。

これらのリスクについて、「どの事業に、どのような悪影響を及ぼす可能性があるか?」という視点で評価することが重要です。

まとめ:知財の現在地を知り、戦略の精度を高めよう!

今回は、自社の知的財産ポートフォリオを「棚卸し」し、その現状を把握するための3つのステップを解説しました。

  1. 知財リストを作成し、全体像を把握する。
  2. 個々の知財の価値(強み・弱み)を見極める。
  3. 潜在的な知財リスク(問題点)を洗い出す。

この「棚卸し」を通じて、あなたの会社の知財に関する「現在地」が明確になったはずです。

保有する武器の状況、磨くべき宝、そして注意すべきリスク。これらを正確に把握することこそ、効果的な知財戦略を立案するための揺るぎない土台となります。

そして、このプロセスは、前回把握した「事業の現状と目論見」と密接に連携します。

「どの事業を、どの知財で支えるのか?」 その繋がりを常に意識してください。

次のステップへ!

さあ、自社の内部情報(事業と知財)の把握が終わりました。

これで、戦略立案に必要な「己を知る」部分が完了です。

次は、視点を外に向け、自社を取り巻く「外部環境」を分析するステップに進みます。

次回【Step2:外部情報を知る】では、PEST分析や市場動向分析などを通じて、マクロな環境変化や市場のチャンス・脅威を探る方法について解説します。

こちらの記事もぜひ参照してください。

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この記事を書いた人

企業の知的財産部門で働く、理系出身の弁理士です。

知財分野に関わり始めた方が、これからさらに成長していくお手伝いができればと思い、このサイトを作りました。

[経歴]
・2007年 関西の大学院を修了
・2007年 食品会社で研究開発を行う
・2013年 食品会社の知的財産部門で働く
・2019年 弁理士試験合格
・2020年 弁理士登録
・2021年 ブログを執筆開始

知的財産の世界を、できる限りわかりやすくお伝えしたいと思っております。
皆さんに少しでも興味を持っていただけると幸いです。

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