特許無効資料調査とは?|事業と商品に直結する調査

他社の特許で、いやなものを見つけてしまった。
この特許、どうにかできないかな。。。

様々な特許があるから、自社の事業に影響を与えるものもあるよね。
そんなときは、「特許無効資料調査」を行う必要があるよ。

特許無効資料調査!?
それって、どんな調査なの?

そうだね。
今回は、これについて詳しく見ていこうか。

特許無効資料調査とは何か?
✓ なぜ無効資料調査を行うのか?
✓ どんな手順で進めるとよいのか?特許無効資料調査とは何か?

目次

特許無効資料調査と、それを行う理由

特許無効資料調査とは、

 出願された発明や、登録された特許に対して、無効となる理由を示せる根拠資料の調査

のことです。

なぜ特許無効資料調査を行うのでしょうか?

その理由として、以下のものが挙げられます。

  • 他社の権利化された特許を無効化するため
  • 権利化前の出願された発明について、権利化を阻止するため
  • 警告、及び特許侵害訴訟への対応のため
  • 他社特許のライセンス交渉のため

1つは、他者の権利化された特許を無効化するためです。
特許を無効化するには、「無効審判」を行うか、「異議申立」を行う必要があります。

それぞれ条件は異なりますが、簡単に言うと、登録された特許の公報が発行されて6か月以内であれば、「異議申立」が行えます。

時期に関係なく行うのであれば、「無効審判」が行えます。

2つ目は、権利化前の出願された発明について、権利化を阻止するためです。
審査段階のものは、審査官が特許性が無いと判断すれば、特許が成立しません。
そのため、審査官が特許性が無いと判断できるような資料を、誰でも特許庁に提出できます。
これを一般に、「情報提供」といいます。

3つ目は、警告、及び特許権侵害訴訟への対応です。
特許権者から、
「あなたは私たちの特許権を侵害していますよ」
という警告があったときに、どのように対応すればよいでしょうか。

一つは、もちろん「特許を侵害していない」ということが挙げられます。
一方で、「対象の特許には無効理由がある」という主張も意味のあるものです。

無効理由のある特許権とは、瑕疵(キズ)のある権利と見られます。
そのため、そのような権利で権利行使をするのは適切でないと判断され、その瑕疵が治るまで、権利行使は止められるのです。

そのため、他者から権利行使をされたときにも、無効理由を探す意味はあるのです。

4つ目は、ライセンス交渉時です。
他社の権利をライセンスしてもらう場合、一般に費用が発生します。
そこで、対象特許に無効理由が存在することを理由に、ライセンス費用を下げてもらう、という交渉も可能となります。

以上の様に、無効理由を調査するケースは、様々あります。

特許無効資料調査を行うステップ

特許無効資料調査を行う際、大きく以下のステップで行うと良いでしょう。

  1. 発明内容の確認
  2. 対象特許の周辺情報収集
  3. 無効化するポイントの特定
  4. 特許、文献調査
  5. ピックアップ資料の整理
  6. 対応方法の決定

それぞれのステップについて、詳しく見ていきましょう。

Step1: 発明内容の確認

まずは、対象となる発明内容について確認します。

他者の特許の請求項の内容、明細書の内容を十分に理解し、
 ・リスクとなるのか
 ・どの部分がリスクになるのか

を確認しましょう。

Step2: 対象特許の周辺情報収集

次に、対象特許の周辺情報を収集します。

周辺情報として、以下のことを確認すると良いでしょう。

  • 審査・審判過程の確認、登録後の経過の確認
  • 対象特許の分割出願等の確認
  • 引用例、引用文献の確認
  • 同じ発明者による他の出願や論文

その理由は、上記のことを調べていく中で、無効理由が見つかることがあるからです。

審査・審判過程は、「包袋」を取寄せることで、その内容を確認することができます。
最近では、J-PlatPatでも概ねの情報は得ることができるようになっています。

引用例、引用文献は、技術的に近い内容が記載されていますので、無効理由を探す有用な手掛かりになるでしょう。
引用文献の引用文献まで見てみるのもよいでしょう。

同じ発明者による他の出願や論文は、同様の技術内容が書かれてあることがあります。
他の発明とどのように関連があるのか、を理解することで、対象特許の本質を理解することに役立つでしょう。

Step3: 無効化するポイントの特定

無効化を行うにあたって、どの点に着目して無効化するのか、を定めておく必要がります。
無効化するポイントがズレていると、意味のある無効化ができないためです。

観点は、主に以下の2つがあります。

 ・経過情報から考える
 ・事業実施状況から考える

経過情報をよく読むことで、発明の本質はどこなのか、どの部分であれば、無効化の可能性が高くなるか、の予想がつきやすくなるでしょう。

また、自身が事業を行うにあたって、支障のない様にするにはどうする必要があるのか、を定めることで、目標が決まることでしょう。

完全に無効にする必要まではなく、範囲の「減縮」でよい、という判断となることもあるでしょう。

Step4: 特許、文献調査

ここまで準備が揃ったら、実際に調査を行っていきます。

特許無効理由調査では、対象となる特許の出願時前の資料を調査します。
出願日と同じ日であっても、公開の時分が出願時前であれば、資料としては使用可能です。

資料の範囲は、特許、実用新案、意匠、新聞、雑誌、図書、論文、Web情報、とあらゆる情報が使用可能です。

観点としては、

 ・「新規性」を否定できるか

 ・「進歩性」を否定できるか

といったことが主になるでしょう。

検索のアプローチ方法としては、まずはピンポイントとなる技術内容を調査し、そこを中心に徐々に調査範囲を広げていくとよいでしょう。

調査方法としては、無料データベース、商用データベース、等が使用できます。
又は、研究者や開発者といった「人」に頼ることで、有効な文献を早く見つけることができることもあります。

具体的な調査検索方法については、別途詳しくお伝えします。

Step5: ピックアップ資料の整理

ピックアップ資料を整理する目的は、

実際に収集した資料によって、新規性や進歩性を否定できる主張となるかを確認すること

です。

第一に、対象となる特許の構成要件を、しっかりと網羅した状況になっているかを確認する必要があります。
構成要件を一つでも満たさないのであれば、新規性、進歩性を否定できないからです。

第二に、複数の資料を組み合わせる理由付けができるかを確認する必要があります。
複数の資料で対象特許の構成要件を満たしていたとしても、その複数の資料を組み合わせる理由付け(動機づけ)がしっかりしていないと、進歩性が有ると判断されてしまうからです。

これには、中心となる文献(主引例)をどれにするのかを考える必要があります。
また、周知技術と主張するためには、周知技術の資料は複数集めておく必要があります。

これらを整理するために、
 「構成要件対比表」
というものを作るといいでしょう。

これは、対象となる特許の構成要件と、その要件に該当する文献を対比できるように整理した表です。

これにより、主張しようとする無効理由が妥当であるかどうかを理解しやすくなるでしょう。

Step6: 対応方法の決定

最後に、行った調査結果に基づき、実際にどのような対応を行うかを決定します。
具体的な対応方法としては、以下のことが考えられます。

  • 異議申立て期間中であれば、異議申立てを行う。
  • 異議申立期間外であれば無効審判を行う。
  • 審査・審判中であれば、情報提供を行う。
  • ライセンス交渉を考えているのであれば、交渉相手に提示する。
  • 係争中でなければ、何もせず、いざというときのカードとして持っておく。
  • 無効理由が見つからない場合は、設計変更を行う。

これらは、もちろん知財部門の考えも入るでしょうが、関連する事業部門、経営部門の意志も含めて、決定を行う必要があるでしょう。

まとめ

今回は、特許無効理由調査についてお伝えしてきました。

特許無効資料調査とは、出願された発明や、登録された特許に対して、無効となる理由を示せる根拠資料を調査することでした。

調査の進め方としては、
「Step1:発明内容の確認」
「Step2:対象特許の周辺情報収集」
「Step3:無効化するポイントの特定」
「Step4:特許、文献調査」
「Step5:ピックアップ資料の整理」
「Step6:対応方法の決定」
といった内容をお伝えいたしました。

今回の内容が、少しでもあなたのお役に立てるようであれば幸いです。
今日という日が、あなたにとって良い一日となりますよう願っています。

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この記事を書いた人

企業の知的財産部門で働く、理系出身の弁理士です。

知財分野に関わり始めた方が、これからさらに成長していくお手伝いができればと思い、このサイトを作りました。

[経歴]
・2007年 関西の大学院を修了
・2007年 食品会社で研究開発を行う
・2013年 食品会社の知的財産部門で働く
・2019年 弁理士試験合格
・2020年 弁理士登録
・2021年 ブログを執筆開始

知的財産の世界を、できる限りわかりやすくお伝えしたいと思っております。
皆さんに少しでも興味を持っていただけると幸いです。

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