特許の「クリアランス調査」という言葉を聞いたことあるけど、
これって、何をすることなの?
クリアランス調査というのは、例えば自分が商品を販売しようとするとき、他の人の特許を侵害していないか確認する調査だよ。
へ~そうなんだ。
でも、何だか難しそうな調査だね。
具体的にどんなツールを使って、どのように調査するの?
綿密な調査は大変だけど、大まかな調査であれば、誰でおできるよ。
ここでは、調査の具体的な方法も教えていくよ。
調査って、難しくて大変そうだし、とっつきにくいですよね。
そんなあなたにも、特許クリアランス調査の第一歩を踏み出し、実際に調査が行えるような内容をお伝えしていきます。
✓ 特許クリアランス調査の「手順」
✓ 特許クリアランス調査の「ツール」
✓ 特許クリアランス調査における「検索式の作り方」
1.クリアランス調査(権利侵害調査)とは
特許クリアランス調査、又は権利侵害調査とは、商品やサービスを世の中に出していく前に、その商品やサービスが、他者の特許権を侵害するものではないかを確認するものです。
もし、販売したものが、他者の特許権を侵害するものであった場合、その商品の販売停止、さらには、損害賠償請求をされることにもなりかねません。
商品を世に出すために、大きな費用や労力を掛けたにも関わらず、そのような結果となると、自社にとって大きな損害になります。
さらには、お客様からの信用も落としてしまうかもしれません。
そのようなことが無いように、世の中に出す前に、クリアランス調査を行うのです。
それでは、このクリアランス調査、実際にはどのように行っていくのでしょうか?
順を追って、具体的にその内容を見ていくことにしましょう。
2.クリアランス調査の手順
2-1. 対象商品の決定
まずは、販売しようとしている対象の商品を特定します。
特許クリアランス調査では、「技術」を見ていくことになります。
そのため、その商品の技術内容をまずは確認する必要があります。
対象となる商品は、
- どのようなコンセプトで作られているのか。
- どのような原材料、部品が使われているのか。
- どのような作り方をしているのか。
少なくとも、上記の3点は確認しておくとよいでしょう。
ここで特定した内容に基づいて、検索式の考案や、侵害有無の判断を行っていくことになります。
2-2.検索式の作成
検索式とは、探している特許をピックアップするために使う式です。
世の中には多数の特許が出されています。
それらを一つずつ読んでいては、目的の特許を探すためには相当の時間が掛かります。
ですので、目的の特許と関連の近いものを呼び出すために、検索式を作ります。
作成した検索式を、調査ツールに打ち込むことで、関連する公報の集団を呼び出すことができます。
検索式の具体的な作成方法は、次の項でお伝えいたします。
この検索式を作成する作業が、調査に慣れない人が感じる、大きなハードルだと思います。
2-3.スクリーニング
検索式によりピックアップした特許の集団であっても、
対象の商品とは関連のない特許は数多くあります。
その、関係のない特許のことを、
「ノイズ」
と言うことがあります。
最初の段階では、この「ノイズ」を速やかに除外することで、効率的に選別を進めることができます。
一見して対象商品と関係がないことがわかるこの「ノイズ」を除去していく作業、
これを、
「スクリーニング」
と呼びます。
スクリーニングをすることで、対象商品と関連の近い特許が徐々に絞られてきます。
2-4.権利範囲(請求項)の確認
スクリーニングにより、さらに選別された特許について、
対象商品が特許の権利範囲に入るか否かを判断していきます。
特許の権利範囲というのは、どこに記載があるのでしょうか。
それは、
「請求項」
と書かれた部分です。
請求項は、請求項1,請求項2、などと、複数存在することもあります。
その場合、全ての請求項と照らし合わせて、対象商品が権利範囲に入ってないかを確認する必要があります。
特許クリアランスは、一つ一つの公報と対象商品を照らし合わせながら、地道に行っていくことが必要な作業なのです。
2-5.調査結果のまとめと報告
対象商品とピックアップした特許の照合が終了したら、結果をまとめ、報告する必要があります。
対象商品と関連する商品があったのか、なかったのか。
あったのであれば、どのような特許であったのか。
その特許を回避する方法があるのか、対応方法はどうするのか。
などを報告することができるとよいでしょう。
3.検索手段
3-1.無料、有料の検索ツール
数多くある特許の中から、どのように調査を行なえばよいのでしょうか?
ここでは、調査を行うためのツールをご紹介します。
特許調査ツールは、無料のものと有料のものがあります。
無料のツールには、例えば以下のようなものがあります。
- 「J-PlatPat」: https://www.j-platpat.inpit.go.jp/ (特許庁)
- 「Google Patents」 : https://patents.google.com/ (Google)
J-PlatPatは、特許庁が提供しているサービスで、誰でも無料で、登録などなくとも使用できます。
同様にGoogle Patentsは、Googleが提供しているサービスで、誰でも無料で、登録なしで使用できます。
何れも、検索窓にキーワードを入れることで調査できるため、簡易的に調査を行うにはよいでしょう。
一方、有料のものには、
- 「JP-NET」(日本パテントデータサービス株式会社)
- 「Patent SQUARE」(Panasonic)
- 「HYPAT-i」 (株式会社発明通信社)
など、多数あります。
3-2.無料ツールと有料ツールの違い
では、無料のものと、有料のものとで、何が違うのでしょうか?
無料のサービスでは、簡易的に調査を行える一方、検索範囲の詳細な設定ができなかったり、調査結果を一覧化したデータの打ち出しが出来なかったりします。
一方、有料サービスでは、調査期間の設定や、出願書類の中のどの部分の記載を調査するか、など詳細に検索条件を設定できます。
また、一覧化したファイルの打ち出しや、関連ある特許への評価やコメントなどを保存することができるものもあります。
ラフに少し調査を行うのであれば、無料サービスを用いるのでもよいですが、クリアランス調査は、極力調査漏れがないように、網羅的に行う必要があります。
その観点から、現在は企業の知財部門では、ほとんど有料の調査サービスを導入しているかと思います。
簡単に調査するのであれば、無料サービスで、詳細に調査を行うのであれば、有料サービスを用いる、というように使い分けるとよいでしょう。
4.検索式の作り方
4-1.キーワード検索と分類検索
それでは、実際に検索するとき、どのように検索を行うのでしょうか。
検索方法は、主に、
「キーワード検索」
と、
「分類検索」
があります。
特許クリアランス調査では、この「キーワード検索」と「分類検索」組み合わせて検索を行うとよいでしょう。
「キーワード検索」とは、直接関連するキーワードを打ち込み、そのキーワードに関係する特許をピックアップする方法です。
この検索方法の良いところは、直感で検索ができ、対象のキーワードに直結する特許をピンポイントでピックアップできるところです。
一方、この検索方法のデメリットは、調査漏れが発生しやすいことです。
例えば、「リンゴジュース」に関する特許を調べたくて、検索窓に
「りんご ジュース」
と打ち込んだとします。
そうすると、リンゴジュースに関する特許をピックアップできるでしょう。
しかし、
「アップルジュース」
「アップル飲料」
「アップルを使った飲み物」
「果実を使った飲料」
というように記載されたものは、ピックアップすることができません。
リンゴジュースと書かれたものしか拾ってくれないからです。
キーワード検索には、このようなメリットとデメリットがあるのです。
一方、「分類検索」とは、特定の観点毎に振り分けられた「分類」を基に調査を行っていくことです。
各特許には、様々な観点で分類タグが付与されています。
例えば、「野菜」とか、「果実」とか、「飲料」とか、「リンゴ」とか。
この分類は、意味で分類されていますので、特許に「(果物の)アップル」と記載されていても、「リンゴ」の分類に振り分けられています。
そのため、言葉の違いによる調査漏れを防ぐことができるのです。
つまり、分類検索の良いところは、調査漏れをなくしやすいところです。
一方、分類検索のデメリットは、ノイズを拾ってきやすくなることです。
ピンポイントで調査をするのではなく、広めに検索を行うことになるため、ターゲットとなる公報とは関連性の低い公報(ノイズ)もピックアップされることになります。
特許クリアランス調査では、調査漏れを防ぐことが第一ですので、「キーワード検索」と「分類検索」をうまく組み合わせて検索を行うことが適切でしょう。
4-2.論理式の作成
それでは、具体的に検索式はどのように立てていくのでしょうか。
検索式は、「論理式」という形式で作ります。
「論理」というと、難しそうに聞こえるかもしれません。
しかし、実際には、小学校程度の算数の知識があれば、誰でも作ることができますので、心配しなくても大丈夫です。
この検索式の作成に使うものは、算数でいうところの、
「+(足し算)」
「×(掛け算)」
「-(引き算)」
位です。
検索に用いる論理式では、
- +(足し算)は、「or」で表します。
- ×(掛け算)は、「and」で表します。
- ー(引き算)は、「not」で表します。
具体的に見ていきましょう。
例えば、「リンゴ、アップル」の範囲を仮に「A」とします。
「ジュース、飲み物」の範囲を「B」とします。
リンゴに関するものと、ジュースに関するもの全てをピックアップしたい場合、
「A or B」
と論理式を立てることで、リンゴやジュースに関するものをピックアップできます。
これには、リンゴの食べ物であったり、オレンジジュースに関するものも含まれるでしょう。
一方、リンゴであり、かつジュースであるもの、つまりリンゴジュースに関する物をピックアップしたい場合、
「A and B」
と論理式を立てることで、リンゴジュースに関するものをピックアップできます。
これには、リンゴの食品や、オレンジジュースは含まれません。
最後に、リンゴであって、かつ、ジュースであるものを含みたくない場合、
「A not B」
と論理式を立てることができます。
これには、リンゴジュースは含まれないことになります。
つまり、リンゴに関する物で、ジュースではない物、例えばリンゴの食品などがピックアップされます。
これら、3つの記号をうまく使い分けて、調査をしたい範囲を特定していくとよいでしょう。
まとめ
今回は、特許クリアランス調査、権利侵害調査についてお伝えしてきました。
特許クリアランス調査とは、世の中に出していこうとしている商品が、他者の特許を侵害していないかを確認するための調査でした。
調査を行うには、対象となる商品の技術をまずは確認することが必要でした。
そして、調査を行う方法としては、無料のサービス、及び有料のサービスがあることをお伝えしました。
また、検索方法として、キーワード検索と分類検索があり、うまく組み合わせるとよいというものでした。
あわせて、検索式は論理式を使って立てる必要があり、「or」「and」「not」といった記号を使う必要がありました。
ピックアップした特許は、商品の技術内容と請求項を照らし合わせながら、その関連性を見ていく必要があることをお伝えしました。
今回の内容が、少しでもあなたのお役に立てるようであれば幸いです。
今日という日が、あなたにとって良い一日となりますよう願っています。
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