特許要件が大事!|特許を取れる発明ってどんな発明?

発明を思いついたんだけど、
特許を取るには、何か条件が必要なの?

特許を取るための条件のことを「特許要件」と言うんだ。
特許要件は、細かいものまで入れると、たくさんあるよ。

え~っ!
そんなにたくさんは覚えきれないよ。
特許を取るのはあきらめようかな。。

大丈夫。とりあえずは、その中でも代表的なものが
わかっていればいいよ。

特許を取りたいと思っても、どのような条件が必要なのかがわからないと、自分が考えたアイデアで特許が取れるかどうかわかりませんよね。

特許となるための条件を「特許要件」といいます。
今回は、特許要件について、代表的なものをお伝えしていきます。

✓ 代表的な特許要件とその内容

✓ それぞれの特許要件が設定されている理由

目次

産業上の利用可能性

まず、前提として必要な条件は、

 ・考え出した発明が、産業において利用ができること

です。
産業というのは、工業だけではなく、農業や鉱業なども広く含むものです。

特許制度は、産業の発達を目的としています。
そのため、産業上利用できる可能性がないものは、特許として認められません。
つまり、学術的、実験的にのみ利用することができる発明を排除するという意味があります。

産業上利用することができない発明の類型には、以下の3つがあります。

  • 人間を手術、治療又は診断する方法の発明
  • 業として利用できない発明
  • 実際上明らかに実施できない発明

人間を手術、治療又は診断する方法の発明が特許にならない理由は、
手術や治療のたびに特許権者に許可を得ていては、助けられる命も助けられなくなるためです。

業として利用できない発明の具体例は、喫煙方法のような個人的に飲み利用される発明や、学術的、実験的に飲み利用されるものです。

実際上明らかに実施できない発明の具体例としては、オゾン層の減少に伴う紫外線の増加を防ぐために、地球表面全体を紫外線吸収プラスチックフィルムで覆う方法、があります。

新規性

「新規性」という言葉は、聞いたことがある方もいるかと思います。
「新規性がある」とは、

 ・世の中で客観的に見て新しい

ということです。
新規性の要件を満たすには、主に以下の3つの条件があります。

  • 公に知られた発明ではないこと
  • 公に実施された発明ではないこと
  • 頒布された刊行物、又はWeb上に記載された発明ではないこと

公に知られた発明とは、秘密保持義務のない人が、一人でもその発明を知っている発明のことです。この場合、その発明は新規性が無いものとされます。

公に実施された発明とは、公に知られる状況、又は公に知られるおそれのある状況で実施された発明のことです。この場合、その発明は新規性が無いものとされます。

頒布された刊行、又はWeb上に記載された発明とは、書籍や論文、Web上で公開された発明のことです。この場合、その発明は新規性が無いものとされます。

新規性の要件を満たすには、これらの3つの条件をクリアする必要があります。

進歩性

新規性と並んで「進歩性」も、聞いたことのある方は多いと思います。

「進歩性がある」とは、

 ・公に知られていることに基づいて、容易にその発明を思いつくことができない

ということです。

特許で「進歩性がある」ことが条件となっているのは何故でしょうか?

それは、誰でも簡単に思いつくことができるような発明に特許を与えると、特許によって制限されてばかりになり、逆に産業が発達しなくなってしまうためです。

それでは、どのように進歩性があるか否かを判断するのでしょうか?
これは厳密に説明すると長くなってしまうのですが、ひとまずポイントのみを説明すると、

  • 複数の公知情報を組み合わせて、その発明にたどり着くことができるか
  • その複数の情報を組み合わせる動機づけ(理由)があるか

という基準に照らします。

それにより対象となる発明にたどり着くことができなければ、進歩性がある、とされます。

記載要件

ここから3つは、特許の出願資料を作成する際に必要な要件をお伝えします。
これは、資料に記載する上での要件ということで、「記載要件」とも呼ばれます。

サポート要件

まず一つ目は、サポート要件です。
これは、特許を取ろうとする範囲において、実際に明細書や実験データなどによって、発明の効果があることがカバーされている、ということです。

実験データなどによってサポートされているということから、サポート要件という言葉で一般に呼ばれます。

特許要件としてサポート要件がが設定されている理由は何故でしょうか?

それは、本来発明の効果がない部分、又は効果があるかどうかを認識できない部分にまで特許を与えてしまうと、権利を与え過ぎであるからです。

実施可能要件

記載要件の2つ目は、「実施可能要件」です。
これは、特許を与えられる発明が、実施できるように、出願資料に書かれているということです。

特許制度の目的は、権利保護と同時に、発明の利用という観点もあります。
権利保護の代償として、情報を公開することが求められます。
これによって、権利期間が終了した後は、その発明を誰もが利用できるようになるのです。

そのため、その発明を実施できないように書かれているものについては、情報を隠し過ぎであるということで、権利を与えられません。

明確性要件

記載要件の3つ目は、「明確性要件」です。
出願の資料に記載されている発明の内容が明確である必要があります。

発明の内容が不明確であると、どこまでの範囲が権利範囲かがわからなくなってしまいます。
そうすると、特許を侵害しないように気を付けようとも、侵害するか否かを判断できなくなってしまうからです。

特許の範囲は、曖昧にせず、明確に記載する必要があります。

まとめ

今回は、特許要件について説明してきました。

まず、特許発明の大前提として、産業上利用できること、という条件がありました。
次に、新規性と、進歩性があること、という条件がありました。

そして、記載要件として、サポート要件、実施可能要件、明確性要件、というものがありました。

細かく言えば、他にも要件はありますが、基本としては、上記の要件を理解しておいていただけるとよいと思います。

今回の内容が、少しでもあなたのお役に立てるようであれば幸いです。
今日という日が、あなたにとって良い一日となりますよう願っています。

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この記事を書いた人

企業の知的財産部門で働く、理系出身の弁理士です。

知財分野に関わり始めた方が、これからさらに成長していくお手伝いができればと思い、このサイトを作りました。

[経歴]
・2007年 関西の大学院を修了
・2007年 食品会社で研究開発を行う
・2013年 食品会社の知的財産部門で働く
・2019年 弁理士試験合格
・2020年 弁理士登録
・2021年 ブログを執筆開始

知的財産の世界を、できる限りわかりやすくお伝えしたいと思っております。
皆さんに少しでも興味を持っていただけると幸いです。

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